Microsoft Foundry を用いた AI エージェント開発の基礎
Microsoft Foundry を使う AI エージェント開発を、基本構成から段階的に学ぶ入門教材です。モデルへの指示、会話、ツール、検索、評価を一つずつ理解し、小さな IT 支援エージェントへ組み立てます。その後、Microsoft Copilot Harness に実行の仕組みを任せる選択肢を学びます。
構成: 全14章と発展付録A(Azure 上の結合・疎通検証は未実施)
変更履歴
本教材の執筆日・改訂日と、内容・出典の確認基準は、この欄の更新日で一括管理します。日付は YYYY-MM-DD の年月日までとし、時刻・タイムゾーンは記載しません。本文・脚注に個別の基準日を併記しません。
変更履歴には、執筆開始・初稿の作成と、内容に影響する改訂だけを記録します。日付表記の統一や整形など、内容に影響しない修正は記録しません。
| 更新日 | 対象 | 変更内容 |
|---|---|---|
| 2026-11-06 | 第2章 | 章立て・図版・出典を維持し、重複する説明を短縮。教材内の各 Markdown を全文18,000文字以下に整理 |
| 2026-11-05 | 第14章・README・章間リンク | Microsoft Copilot Harness の位置付け、責任分界、スキルと添付を使う実習、public preview の制約を追加。全14章の目次と読み順を整備 |
| 2026-11-01 | 第6章・README | 第6章を学習目標、図と説明、通信台帳の実習、確認課題、まとめ・参考情報の流れへ再構成。既存の技術説明・出典・図版と未検証の注記は維持 |
| 2026-10-31 | 全13章・付録A・README | 初稿の作成から全13章への再構成までを実施。全体像・実行方式・課金を第2〜4章へ分け、説明順・参照・図版を整備 |
対象読者と前提知識
AI エージェントを初めて学ぶ開発者や、モデルの API は呼び出したことがあるものの、ツールや会話をどう組み合わせるかが曖昧な読者を対象とします。HTTP API、JSON、関数の入出力の基礎知識を前提としますが、Foundry やエージェント用 SDK の利用経験は問いません。
コード例は Python を使います。関数、辞書、例外処理を読めると実習を進めやすくなります。Azure を使わない場合も、図、架空の入力と検索結果、設計シートを使って学習できます。
別冊『Microsoft Foundry で AI エージェントの開発と運用』を読まなくても、本教材だけで開発の基礎を学べます。本番向けの CI/CD、監視、障害対応を先に実装する必要はありません。
学習のゴール
- AI 活用の中でのエージェントの位置付けと、単発処理・固定ワークフローとの違いを説明できる
- モデル、指示、ツール、会話の文脈、実行制御の役割を説明できる
- プロジェクト、モデルのデプロイ、Agent、Conversation、Response を区別できる
- AI サービス、ツール、ナレッジ、記憶、セーフガードの役割と、プロジェクトの接続先を説明できる
- Foundry と連携する Azure サービスを、必要な構成と任意の追加機能に分けて説明できる
- Prompt エージェントと Hosted エージェントの準備・実施手順、モデルや計算資源などの課金の違いを説明できる
- 接続先、認証、権限、ネットワーク経路を分けて確認できる
- 一つの検索関数を呼び出し、閲覧可能な根拠から回答する仕組みを組み立てられる
- 正常、情報不足、権限不足、検索失敗を含む基本の評価ケースを作れる
- Microsoft Copilot Harness を使う Prompt エージェントで、管理ランタイムに任せる範囲と、認可・承認など自分で保証する範囲を説明できる
この読みもので扱うシナリオ
社員が「Windows で VPN に接続できません」と相談することに代表されるような社内 IT 部門への問い合わせ支援を扱います。必要な情報を確認し、架空の社内手順を検索し、その根拠から回答するところまでが基本課題です。
図 本教材で組み立てる IT 支援エージェント。 矢印は要求や情報の流れです。モデルの要求と、検索関数を実行するプログラムを分けて考えます。これは論理構成であり、ネットワーク配置図ではありません。実習では架空の文書とテスト用の利用者文脈を使い、実在する社内情報や本番の資格情報は扱いません。
外部のチケット登録は、読み取りと更新の違いを学ぶ発展付録です。基本課題の修了条件には含めず、実際の業務 API への接続も行いません。
第14章では同じ社内 IT 支援を題材に、架空の手順ファイルと共通の案内スキルを使います。実際の社員資料や外部操作は追加せず、Microsoft Copilot Harness の管理ランタイムへ任せる範囲を比較します。
章構成
| 部 | 章 | 主な内容と理解のゴール |
|---|---|---|
| 第一部 AI エージェントと Microsoft Foundry を知る | 第1章 AI エージェントはどのように動くのか | AI 活用の中でのエージェントの位置付けと、単発処理・固定ワークフローとの違いを学びます。行動の選択をモデルに委ねる範囲と、五つの役割を説明できることを目指します。 |
| 第一部 AI エージェントと Microsoft Foundry を知る | 第2章 Microsoft Foundry の全体像をつかむ | プロジェクトの AI 機能と連携する Azure サービスを俯瞰します。管理の単位、実行時の部品、補助機能を分け、必要な構成の全体像を説明できることを目指します。 |
| 第一部 AI エージェントと Microsoft Foundry を知る | 第3章 Prompt エージェントと Hosted エージェントの実行方式を理解する | 宣言的な定義と独自コードの配備を比較します。準備、版の作成、呼び出し、状態・ID・ネットワークの責任分界を説明できることを目指します。 |
| 第一部 AI エージェントと Microsoft Foundry を知る | 第4章 Microsoft Foundry の課金と予算を整理する | モデル、ツール、稼働セッション、保持する資源の利用量を積算します。予算通知、実行上限、終了後の整理を区別して計画できるようにします。 |
| 第二部 最初のエージェントを作る | 第5章 学習環境とモデルを準備する | 接続先、モデル、SDK、認証、権限、費用の前提を確認します。自分の学習環境を準備表へ記録し、接続前の不足を見つけられるようにします。 |
| 第二部 最初のエージェントを作る | 第6章 Microsoft Foundry のネットワーク構成を設計する | Foundry への受信と、実行元から接続先への送信を分けて学びます。Private Endpoint と DNS の役割を理解し、接続できないときの確認箇所を説明できることを目指します。 |
| 第二部 最初のエージェントを作る | 第7章 最小のエージェントを作って会話する | モデルと指示で Agent を定義し、会話へ質問を送る流れを学びます。作成した名前や版、会話の ID と応答の状態を対応付けられるようにします。 |
| 第二部 最初のエージェントを作る | 第8章 指示でエージェントの振る舞いを整える | 役割、根拠、不足情報、回答形式を指示へまとめます。同じ条件で変更前後を比較し、指示だけでは保証できない制御も見分けられるようにします。 |
| 第二部 最初のエージェントを作る | 第9章 会話の文脈と状態を扱う | 共通の Agent と相談ごとの会話を分け、履歴と今回の入力の関係を学びます。保存した会話、モデルの文脈、業務の記録を混同しないことを目指します。 |
| 第三部 ツールと知識でできることを広げる | 第10章 Function calling で外部の処理を呼び出す | 関数定義、モデルの要求、プログラムによる実行、結果の返却を追います。検索関数を単体で確かめ、要求と結果を結び付けられるようにします。 |
| 第三部 ツールと知識でできることを広げる | 第11章 社内文書を検索して根拠付きで回答する | 文書の準備、検索、根拠に沿う回答という RAG の流れを学びます。検索品質と文書の閲覧権限を別々に確認できることを目指します。 |
| 第四部 評価して、小さなエージェントを仕上げる | 第12章 評価とトレースで振る舞いを確かめる | 期待結果との比較と、実行経路の調査を使い分けます。正常系だけでなく不足・拒否・失敗を含む評価ケースを作り、改善を比較できるようにします。 |
| 第四部 評価して、小さなエージェントを仕上げる | 第13章 社内 IT 支援エージェントを組み立てる | 会話、検索、入力検証、閲覧範囲、終了条件を一つの処理へつなぎます。根拠付き回答の試作品を理解し、別の題材の設計シートも作れることを目指します。 |
| 第五部 管理ランタイムで実行の仕組みを広げる | 第14章 Microsoft Copilot Harness で実行の仕組みを任せる | Prompt エージェントで Copilot Harness を選ぶ意味を学びます。スキルとファイル読解の実習を通じ、任せる実行制御と残る業務上の責任、preview 制約を区別します。 |
発展付録A 下書き・承認・チケット登録を分ける では、下書き、本人の承認、実行、結果確認を区別します。外部操作を加えたときに、何を追加で保証する必要があるかを紙上で考えます。
章番号は説明順に第1章から第14章まで連続しています。第一部では全体像、実行方式、課金の順に理解し、第二部の環境準備へ進みます。各章は独立した原稿で、章末の「前章」「次章」から同じ順序で読み進められます。
読み進め方
第一部「AI エージェントと Microsoft Foundry を知る」 では、まず部品と役割の対応を理解してください。「モデルが考える」と一括りにせず、検索を行うプログラム、会話を保持する仕組み、実行を止める制御を分けます。第2章で全体像、第3章で実行方式、第4章で課金を学び、連携する Azure サービス、Prompt エージェントと Hosted エージェントの責任分界、費用として数える利用量を整理してから、準備へ進めます。
第二部「最初のエージェントを作る」 では、環境、接続、認証と権限を整理したうえで、最小の応答、指示の変更、会話の継続を順に確かめます。ネットワークは図で受信・送信・DNS の関係を学び、通信台帳へ自分の接続元と宛先を記録します。BYO VNet や managed VNet の詳細は、必要な場合に自分の環境へ当てはめてください。本番向けの閉域環境を構築すること自体は、この部の修了条件ではありません。
第三部「ツールと知識でできることを広げる」 では、検索関数だけを先に動かし、その後でモデルからの要求と結果の往復を追います。検索できたか、閲覧範囲を守ったか、回答が根拠に沿っているかを、それぞれ独立した問いとして読み進めます。
第四部「評価して、小さなエージェントを仕上げる」 では、質問と期待する振る舞いを決め、部品と全体を別々に確かめてください。うまく動いた一例だけで終わらず、情報不足や失敗でも何が返るかを確認し、最後に自分の題材の設計シートへ置き換えます。
第五部「管理ランタイムで実行の仕組みを広げる」 では、第13章までの基本課題と比較しながら、Microsoft Copilot Harness の位置付けを学びます。既存 Agent の切り替えではなく別名の Prompt エージェントを作り、ファイル読解とスキルだけを小さく試します。public preview の実習は任意で、基本課題の修了条件には含めません。
各章は、学習目標、図と説明、小さな実習、確認課題を基本の流れとします。読解だけで進む場合は、入力、ツール結果、期待する応答を紙上で追ってください。実接続していない項目は「未実施」と記録し、成功した試験と混ぜません。
コード例と技術情報の扱い
本文の SDK 例は、参照先に示した現行 Foundry の公式資料に基づきます。classic の API と現行の Agent・Conversation・Response を混用しません。SDK の準備と接続情報は本文の公式手順も併せて確認してください。
Python 標準ライブラリだけの検索関数と、Foundry に接続する SDK コードを区別しています。コードは章内に掲載し、学習時に knowledge.py と support_agent.py へまとめる構成です。モデルの出力や関数要求の回数は固定せず、得られた根拠と期待する振る舞いで確認します。
Azure 上のリソース作成、Foundry SDK とモデルの結合、ネットワーク疎通、評価・トレースの実環境検証は未実施です。初稿は基礎を学ぶ教材であり、コピーすれば一式を構築できる検証済みハンズオンではありません。機能の提供状態、対象リージョン、権限、費用は実施時に確認します。
第14章の Microsoft Copilot Harness は public preview を扱い、ポータル、スキル、ファイル処理も実環境では未検証です。章内の公式資料に従って対応条件を再確認し、既存章の SDK 要件や関数スキーマをそのまま流用しないでください。
次に学ぶこと
Microsoft Foundry で AI エージェントの開発と運用 は、基礎を学んだ後に、責任分界、版管理、安全な外部操作、品質ゲート、リリース、監視、障害対応、改善と廃止を学ぶ別冊です。
参考情報
- Microsoft Foundry のドキュメント — 各章の概念と実装方法を確認する公式情報の入口
- Quickstart: Create a prompt agent — 学習環境で Agent、会話、応答をつなぐ基本例