第4章 Microsoft Foundry の課金と予算を整理する
本章は初稿です。
4.1 この章で学ぶこと
第3章の Prompt エージェントと Hosted エージェントを、費用の視点で比較します。相談件数だけで見積もらず、モデルの全呼び出し、ツール、稼働セッション、関連する保存・監視・接続先を分けることが目標です。
単価や請求体系は、実施するリージョン、SKU、契約と価格表で確認します。以下の数量は架空の計算例であり、実測・標準料金ではありません。Azure のリソース作成や請求の実環境検証は行っていません。
図4-1 一つの相談を、異なる課金メーターへ分ける。 矢印は利用量を積算する関係です。Hosted エージェントの計算資源はセッションごとに数え、保存や専用サービスは要求のない時間にも料金が残り得ます。予算通知は利用停止を保証する仕組みではありません。[^agent-pricing][^hosted][^search-pricing][^registry-pricing][^monitor-pricing][^cost-budgets]
4.2 「Agent を作る料金」と「利用する料金」を分ける
Microsoft Foundry は無料で探索でき、利用する製品や機能はそれぞれの料金体系で課金されます。[^foundry-pricing] 参照した Agent Service の価格表では、Foundry ネイティブの prompts/workflows による Agent の作成・実行に追加料金はありません。ただし、モデルの利用料、ツールやナレッジ接続の料金・ライセンスまで無料になる意味ではありません。 Hosted エージェントには、さらに実行用の CPU・メモリの料金があります。[^agent-pricing]
費用は、次のように分けると見落としを減らせます。
総費用 = モデル推論 + ツール・ナレッジ + Hosted エージェントの計算資源(使う場合)+ 関連 Azure 資源・ライセンス
| 費用の区分 | 主な課金の見方 | 見積もりで確認すること |
|---|---|---|
| モデル推論 | 従量型では入力・出力トークン。モデルの配備方式によって予約容量など別の体系もある | モデルと SKU、全呼び出しの利用量、適用される単価 |
| Prompt エージェントの Agent Service | ネイティブな prompts/workflows の作成・実行に追加料金なし | モデル・ツール・保存先の料金を別に数える |
| Hosted エージェントの計算資源 | 稼働中セッションの vCPU 時間とメモリ GiB 時間 | セッションごとの割り当て、同時利用、課金対象の稼働時間 |
| 組み込みのツール | File Search はベクトル保存量の GB・日、Code Interpreter はセッション、Web Search/Custom Search は取引回数など | 使う機能の単価、無料枠がある場合の適用条件、保存期間や実行回数 |
| 自分の Azure AI Search | Dedicated の容量・時間、Serverless(Preview)の計算資源・保存量など、選ぶ方式による | SKU、検索・インデックス処理、データ量、追加機能 |
| ACR とビルド | 自前 ACR の SKU・保存量。ACR Tasks を使う場合のビルド料金は別 | 不要なイメージ、採用するビルド方法、レジストリを保持する期間 |
| トレースとログ | Azure Monitor/Log Analytics のデータ取り込みや保持など | 必要な記録量、保持期間、採用するプラン |
| その他の接続先 | Storage、Cosmos DB、アプリのホスト、ネットワーク、専用 AI サービス、外部のライセンスなど | 採用したサービスごとの料金体系と、共有・専有の負担範囲 |
モデルの従量課金と Provisioned の予約容量は同じ計算ではありません。ここでいうモデルの Standard 系の配備方式も、第2章 2.2.5節の Agent Service の Basic/Standard 設定とは別の分類です。[^model-deployment-types] Hosted エージェント、組み込みツール、外部接続の単位は Agent Service の価格表を、Search、ACR、ログは各サービスの価格表を確認します。[^agent-pricing][^search-pricing][^registry-pricing][^monitor-pricing]
Code Interpreter のセッション料金と、Hosted エージェントのセッションの計算資源料金も別の項目です。Hosted エージェントからツールを呼ぶ場合は、ツールの利用を Hosted エージェントの料金へ含めて数え落とさないようにします。[^agent-pricing]
「ユーザーが質問していないから費用も止まっている」とは限りません。Dedicated の Search の容量、ACR、保存済みのログなどは、Agent の応答生成とは別の料金体系です。Hosted エージェントも、要求の処理だけでなく、計算資源が解放されるまでの課金対象の時間を考えます。[^search-pricing][^registry-pricing][^monitor-pricing][^hosted]
金額はリージョン、通貨、モデルやサービスの SKU、契約条件によって確認します。本章では特定契約の円・ドル単価を固定せず、実施時の価格表で単価を選んで見積もります。無料枠や Preview の表示を、無条件の無料利用と同一視しません。[^agent-pricing][^search-pricing]
4.3 一つの相談に含まれる利用量から見積もる
一つの相談でも、最初の解釈、確認質問、ツール要求、検索結果からの回答という複数のモデル呼び出しが起こります。入力には、指示、今回の質問、送信する履歴や検索結果も含まれます。相談件数とモデル呼び出し回数は、同じ数字ではありません。 見積もりでは、最終回答だけでなく、途中の呼び出しも含めた利用量を数えます。
たとえば、従量型モデルについて次の仮定を置きます。これは実測値や標準料金ではなく、計算方法を学ぶための例です。
| 仮定する項目 | 数量 |
|---|---|
| 月間の相談件数 | 1,000 件 |
| 一つの相談に含まれる全モデル呼び出しの入力合計 | 12,000 トークン |
| 同じ相談の全モデル呼び出しの出力合計 | 1,200 トークン |
| 月間の入力合計 | 12,000,000 トークン |
| 月間の出力合計 | 1,200,000 トークン |
入力 100 万トークンあたりの単価を P_in、出力 100 万トークンあたりの単価を P_out とすると、この仮定のモデル利用料は 12 × P_in + 1.2 × P_out です。キャッシュ入力などに別単価があるモデルや、予約容量を使う方式には、そのまま適用しません。検索用の埋め込みなど別のモデル利用があれば、該当する料金も追加します。[^model-deployment-types]
Hosted エージェントの計算資源は別に積算します。たとえば、1 セッションあたり 1 vCPU・2 GiB を割り当て、10 セッションがそれぞれ 30 分の課金対象時間で稼働したと仮定します。この場合は 5 vCPU 時間と 10 GiB 時間 です。CPU の 1 vCPU 時間単価を P_cpu、メモリの 1 GiB 時間単価を P_mem とすると、計算資源の例は 5 × P_cpu + 10 × P_mem になります。[^hosted][^agent-pricing]
実際にはセッションごとに稼働時間が異なるため、それぞれの「割り当て × 課金対象時間」を足し合わせます。長い idle timeout や大きい CPU・メモリを選ぶ場合は、同時利用が増えたときの総量も見ます。コンテナーを一つ配備したから、全利用者分が一つの固定料金に収まるという計算にはしません。[^hosted]
この二つの例に、検索、組み込みツール、データ保存、レジストリ、ログ、必要なライセンスなどを加えます。Prompt エージェントの基本課題なら Hosted エージェントの計算資源の項目は使いませんが、モデルなどの利用料は残ります。実習では小さな入力から始め、得られた利用量と請求上のメーターを照合して仮定を更新します。
4.4 予算通知と、実際に利用を止める制御を分ける
Azure Cost Management の budget は、金額の条件に応じて通知する仕組みです。予算を設定しただけで、Agent や Azure 資源の利用が自動的に停止するわけではありません。 費用データや判定には遅延もあるため、リアルタイムの厳密な支出上限とは扱いません。[^cost-budgets]
学習でも、費用の負担先、通知先、使用する資源と終了後の整理を先に決めます。そのうえで、アプリケーション側では最大ラウンド数、ツール呼び出し回数、出力トークン数、利用頻度などを制限します。Hosted エージェントでは、セッションあたりの資源と idle timeout を選びます。同時利用の上限が必要なら、アプリや API の受付側で制御し、セッション数に応じて利用量が増える実行モデルに合わせて設計します。[^hosted]
終了後は、保持する Agent の版・会話・セッションと、片付けるものを分けます。不要な File Search の保存データ、自前 ACR のイメージやレジストリ、専用のデータ資源、ログの保持なども対象に含めます。コード配備に使った成果物や、予約したモデル容量がある場合も、それぞれの整理・契約条件を確認します。[^agent-pricing][^registry-pricing][^monitor-pricing][^model-deployment-types]
クライアントの終了、Agent の版の削除、Hosted エージェントの idle による計算資源の解放は、関連するすべての Azure 資源や保存データを削除する操作ではありません。共有のプロジェクトやモデルは削除せず、自分が作成し、削除を許可された学習用資源だけを整理します。
4.5 小さな実習と確認課題
4.3 の架空例を紙上で計算し、入力1,200万・出力120万トークン、Hosted エージェントの5 vCPU時間・10 GiB時間になることを確認してください。次に、全モデル呼び出しを一つ減らした場合と、セッションの稼働時間だけ短くした場合で、どの項目の数量が変わるかを説明します。
続けて、次の判断を説明してください。根拠は4.4 の通知と終了後の整理に戻って確認します。
| 問い | 判断の要点 |
|---|---|
| 月間予算を設定すれば、その金額で利用が必ず止まるか | 通知と実行上限を分け、データの遅延も考える |
| Agent を削除すれば、Search や ACR などの費用もすべてなくなるか | 関連資源、保存データ、契約を個別に確認する |
最後に、モデル、検索、ACR、ログを「共有している」「自分専用」「今回は使わない」に分類し、使用を止める担当者と、削除を許可された資源だけを記録します。紙上の計画を、削除済み・請求停止済みの確認と混同しません。
4.6 まとめ
総費用はモデル推論、ツールやナレッジ、Hosted エージェントの計算資源、関連サービス・ライセンスへ分けます。相談ごとの全呼び出しと、各セッションの割り当て・課金対象時間を積算し、採用するサービスの単価を対応付けます。
予算は通知、アプリの上限は実行制御、資源の削除や契約の見直しは終了後の整理です。三つを区別し、共有資源を勝手に消さず、第5章の準備表へ費用の負担先と確認先を引き継ぎます。
4.7 参考情報
- Foundry Agent Service pricing overview — Hosted エージェント、ツール、知識接続などの課金項目と単位
- Understanding deployment types in Microsoft Foundry Models — モデルの従量型と予約容量などの配備方式
- Foundry IQ (Azure AI Search) pricing — Dedicated と Serverless など検索基盤の料金
- Azure Monitor Logs Cost Calculations And Options — ログの取り込みと保持に関わる費用
- Tutorial - Create and manage budgets — 予算の条件、通知と費用データの扱い
[^hosted]: Hosted agents in Foundry Agent Service — Microsoft
[^foundry-pricing]: Microsoft Foundry pricing — Microsoft
[^agent-pricing]: Foundry Agent Service pricing overview — Microsoft
[^model-deployment-types]: Understanding deployment types in Microsoft Foundry Models — Microsoft
[^search-pricing]: Foundry IQ (Azure AI Search) pricing — Microsoft
[^registry-pricing]: Azure Container Registry pricing — Microsoft
[^monitor-pricing]: Azure Monitor Logs Cost Calculations And Options — Microsoft
[^cost-budgets]: Tutorial - Create and manage budgets — Microsoft
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